カッコ悪い日本…

 

From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学

おっはようございま~す(^_^)/

百田尚樹氏の小説『海賊とよばれた男』(講談社)がベストセラーになっていますね。この小説は、民族系石油会社の雄・出光興産の創業者・出光佐三(いでみつ・さぞう)氏(1885-1981)をモデルとし、ほぼ事実に即してその生涯を描いています。

出光佐三氏は、福岡県宗像市の赤間(あかま)の出身です。私は昨年まで、赤間にある福岡教育大学で授業を持っていたので、ほぼ毎週通っていました。それもあって、出光氏には親しみがありました。

『海賊と呼ばれた男』のクライマックスは、昭和28年の日章丸事件です。
当時、英国の石油資本の支配から脱却しようと、イランは自国の石油資源の国有化を行いました。英国政府や欧米の石油メジャーとの対立を恐れた内外の石油会社は、どこもイランから原油を直接買い付けようとはしませんでした。

出光興産(小説中では「国岡商店」)のみが、イランに自社のタンカー・日章丸を派遣し、英国の妨害や石油メジャーの嫌がらせにもめげず、買い付けに乗り出し、それに成功したのです。

この小説がなぜ大きな支持を集めているのでしょうか。
φ(.. )メモメモ

主人公は、まず従業員を大切にしました。
たとえば、終戦直後の混乱期であっても約1000人の従業員のうち一人も解雇しませんでした。

実際の出光興産も、小説で描かれている通りだったようです。戦時中の出光の仕事の大半は、朝鮮半島や満州や南方などの日本の海外の事実上の統治地域、占領地域で行われていたそうですから、終戦後は、海外の仕事がほとんどなくなってしまう状況だったのですが、「全員馘首せず」を方針で乗り切ったのだそうです。

また、主人公は、石油メジャーの妨害をものともせず、戦後の日本経済の復興や消費者である庶民の便宜のために己の信念を貫きます。

戦後の復興期、高度経済成長期の石油の供給不足が続くなか、安い高品質な石油を消費者に届けようと、石油メジャーの圧力や政府の規制に対抗し、供給改善に努めます。(石油需要が旺盛で、供給が過少だった時期に規制緩和を訴え、消費者の便宜を図ったのですから、デフレ下で行う現在のものと違って正しい規制緩和ですね。)

そして石油業界における民族(国内)資本の牙城を守り抜きます。

加えて、上記のように、欧米諸国のくびきを解き、新しい国づくりを始めようとするイランを助けます。

つまり、この小説が好評を博しているのは、主人公の「強きを挫き、弱きを助ける」一貫した姿勢や、欧米に対しても臆せず道義を訴える豪胆さが、あるべき日本人像を体現していると感じられ、共感を呼んでいるのだと思います。

ひるがえって現在の日本はどうでしょうか。

ご存知のとおり、TPP(環太平洋経済連携協定)をめぐる二国間協議では、自動車や保険などの分野で日本は米国に譲歩し続けています。

さらに報道によると、政府は近く、庶民の足である軽自動車税の大幅引き上げを検討しようとしているそうですね。

TPP売国交渉 今度は「軽自動車」を米国に献上(2013年8月26日 現代ネット)
http://gendai.net/articles/view/syakai/144204

参院選を意識して一時控えられていた、正社員の解雇規制の緩和をめぐる議論も再び取り上げられるようになってきました。9月2日から産業競争力会議の会合が再開されたようですが、そのなかで、解雇規制のありかたについてもあらためて議題に上るようです。

産業競争力会議が議論を再開 農業・医療・雇用を重点に(2013年9月2日 産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130902/plc13090218180008-n1.htm

軽自動車規格も、解雇規制の緩和も、どちらも米国が日本に以前から要求してきたことであり、TPP参加を念頭においた準備作業とみてよいでしょう。

ところで、少々脱線しますが、産業競争力会議のHPにあるこのメンバー割をみると、解雇規制の緩和などについて話し合う「雇用・人材」分科会を担当する民間議員の中に、竹中平蔵氏が入るようですね。

産業競争力会議分科会に参画する民間議員について(案)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai13/siryou3.pdf

周知のとおり、竹中氏は、人材派遣大手のパソナグループの取締役会長も務めています。
http://www.pasonagroup.co.jp/company/outline.html

これは、やはり議論の中立性の観点から疑念を招き、大いにまずいのではないでしょうか。マスコミももう少しここに突っ込めばいいのに…。なんでしないんでしょうかね。
┐(゚~゚)┌

話を戻します。
他方、先月末までブルネイで開催されていたTPP交渉では、日本政府は、ベトナムやマレーシアなどの新興諸国に対して金融機関の外資規制の撤廃を求めています。公共事業の入札を外国企業にも開放すべきだという要求も行っています。

日本の金融機関が新興諸国に進出しやすくしたり、企業買収をやりやすくしろというわけでしょう。また、公共事業も日系企業によこせということなんでしょう。

外資規制の撤廃要求 TPP 日本、金融機関進出狙い(2013年8月26日付 産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130826/fnc13082613120004-n1.htm

日本、新興国に入札開放要求 TPP交渉で公共事業受注後押し(2013年8月28日付 47ニュース(共同配信記事))
http://www.47news.jp/CN/201308/CN2013082801001491.html

これ、日本は、あんまりかっこよくないですよね。

日本は、米国に対して常に譲歩しまくりで強いことが言えないのに、新興諸国に対しては強気にでて、長年、米国から要求されてきたようなことを新興諸国に対して求めているなんて。スネ夫みたい…。

そもそも新興諸国が外資の金融機関を規制したり、公共事業への外国企業の入札を制限したりするのは、彼らの国づくりにとって必要な措置だと思います。

少なくとも日本は、先進国と呼ばれるようになるまで、外資の金融機関を制限し国内資本を育ててきました。公共事業への外資の参入も規制し、国内企業によって社会資本の整備を進めると同時に、公共事業を通じた景気刺激策も必要に応じてとってきました。日本の経済成長には、外資を規制し、国内の資本や産業を育成することが必要だったのです。

日本は、苦労して自分たちの手で国内の資本や産業を育成し、日本国民を豊かにしてきました。そして大きな内需を作り出し、貿易依存度が世界有数に低い自立的な経済を作ってきました。

日本は、そういう国づくりをしてきたのに、また米国企業が喉から手が出るほど欲しがっている大きな内需が健在なのに、「アジアの成長を取り込め」「外へ打って出ろ」「バスに乗り遅れるな」というバカの一つ覚えのスローガンのもと、あまり深く考えずに新興諸国の需要を奪いに行く。外国の需要を各国が奪い合う米国提案の仁義なき国際秩序構想に率先して乗ってしまう。あまり褒められたものでないのは確かでしょう。

日本としては、新興諸国に、かつての日本のように、国内資本や国内産業を育み、安定的な自立的経済を作るように支援するのが道義だと思います。

そして、新興諸国に豊かな中産階級が現れてくるようにし、そののちに、日本の高付加価値の製品を買ってもらうという路線をとったほういいでしょう。そのほうが、経済的に見ても、長期的には日本の利益になるはずです。

残念ながら、現在の日本の姿勢は、国内的にも対外的にも「強きを助け、弱きを挫く」場面が多いように見えます。ちょっと情けない…。
(´・ω・`)ショボーン・・・

出光佐三氏は、しばしば「日本人に帰れ」と述べたそうです。「日本人が古くから大切にしてきた和の精神・互譲互助の精神、自分たちの利益ばかりを追求するのではなく、世のため人のためにことを成す」(出光興産のHPより)。そうすべきだと語っていたそうです。

実際には、「ぐろ~ばる化の時代だゾ!グロ人材にならないと首切るゾ!打って出て、アジアの新興諸国の外需を奪ってコイ!!」という現在の「グローバル化路線」では、出光のような志の高い企業でも、民間の努力では、なかなか「和の精神・互譲互助の精神」で商売をするのはむずかしいのではないかと想像します。

そういう理想や理念が通用する枠組みを作るのは、やはり政治の仕事でしょう。
m9(`・ω・´)キリッ

安倍首相も『海賊と呼ばれた男』を愛読しているようですが、この小説が、日本人の琴線に触れ、ベストセラーとなっている理由を、現政権には、ぜひ自問してもらいたいですね。

そして、日本人が本当に望ましいと思う経済や国際秩序のあり方とはどのようなものなのか、また、その実現のためにはどのような戦略を練るべきなのかを、考えてもらいたいと思います。

いつもながら長々と失礼しますた<m(__)m>

 

 


 

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